2012年糖尿病学会見聞録

今年の学会はインクレチン関連の発表が数百題もありトピックでした。

インクレチンとは腸管からでるホルモンのことで、糖尿病に関係するホルモンでは食事をしたときにブドウ糖が小腸で吸収されるときに一緒に出るGLP-1が見つかっています。このホルモンは膵臓にインスリンを出させるように働いて血糖を下げる効果があります。しかし、すぐに分解されてしまうので、その効果は長続きしません。糖尿病の患者さんではGLP-1が減っていて血糖が下がらない一つの原因になっているようです。ここ数年このGLP-1関連のお薬が次々と出てきて、臨床で使われてきたため学会での発表が増えてきたようです。

内服ではGLP-1の分解をする酵素をおさえて、血糖を下げる効果を長持ちさせる薬が数種類でています。GLP-1のアナログの注射も出ています。インクレチンのいいところはいくつもあります。

まず血糖が高いときにしかインスリンを出す刺激をしないので低血糖が起こりにくいとされています。また、いままでの薬で唯一膵臓のインスリンを出す細胞を増やす効果が確認されています。つまり膵臓を保護する作用があるといわれているのです。さらに、食欲を抑えたり、心臓を保護したり、血圧を下げたり、動脈硬化を防いだりとよい報告が相次いでいます。副作用としては、吐き気、下痢と腸の動きが落ちるのでまれに腸閉塞があるようです。注射では膵炎の注意が必要なようです。

実際に何百人かの方に飲んでいただいておりますが、飲み薬では単独では効果十分とはいえませんが、他の薬と合わせて飲んでいただくと驚くほど血糖がさがる方もいて有効と思われます。

次回は、変わりゆく糖尿病の治療方法について、ご連絡いたします。

投稿日:2012年08月22日

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