☆悩みの小部屋☆  AGA編

ケイタ「実は、折り入って話があるんだけど・・・。」

ケイコ「え・・・うん。どうしたの?」

日曜の午後、二人はお台場に打ち寄せる穏やかな波を聴きながら、散歩をしているところだった。改まったケイタの表情を見つめるともなく、ケイコは歩き続ける。

ケイタ「打ち明けたいことがあって。」

— なんだろう。でも、この人がこんな思い詰めた顔をするのは珍しいわ — ケイコの心臓の鼓動が少しずつ、確実に速度を上げ始めた。

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ケイタは今年29才、職業会社員、転職歴なし。性格は真面目で優しいが、優柔不断なところがある。この話を切り出すのに相当勇気がいったに違いない。同じ職場のケイコと付き合ってから二年が経とうとしている。

ケイコ27才。目立つほどの美人ではないが、明るい性格で異性よりも同性から好かれるタイプ。社内では密かに「 お嫁さんにしたい女子NO.1 」との評価を得ていた。

ケイタは、そろそろ結婚を意識する時期に差し掛かっている。相手はもちろんケイコ。社内での評判からしても、そろそろ真剣な申し出をしないと他の誰かにもっていかれてしまう可能性は否定できない。

ところが、いざ結婚についての話をしようとするとケイタには考え込んでしまうことがある。頭の抜け毛が目立って来ているようなのだ。

例えばシャワーを浴びて、シャンプーの泡を流したとき、お風呂の床に流れる髪の量が増えたような気がする。

— そういえば、最近外食が多くて、野菜もろくに食べてないし、体調が万全とは言い難くなってきた。あれ、とんかつについてくるキャベツはサラダって言わないんだっけ・・・。 —

入社七年目。五年目を過ぎた頃から部下もつき、だんだんと自分一人分の仕事量が増してきた。付き合いの飲みも多いから勢い外食で済ませ、ほとんど自炊することもない。週末にケイコが作ってくれる食事が美味しいので、それを楽しみにしている。煮物とか、お味噌汁の出汁が自分の舌に合っている、というのはポイントが高い。

いままで油断して、頭皮のケアなんて考えたこともなかった。

— 最近ではAGAって言うんだよな。生活習慣はもちろんだけど、遺伝的なものもあるのか。オヤジは大丈夫だけど、じいさんはツルっとしてたよなぁ確か。 —

そこまで考えて、ふとケイタは思う。

— 待てよ。あいつは優しいから、もう気づいているけど言わないだけなのかも知れない。でも言わないからといって、薄毛の男をどう思っているのかまでは分からないしなぁ。 —

ケイタはいつになく真剣になる。ケイコに誠実であろうとすればするほど、そんな健康管理目的で結婚を考えたこと自体が失礼な気もする。優しさが裏目に出て、悩みのドツボにはまりそうな自分を叱咤するように深夜パソコンに向かうケイタ。

—まずは、一つずつ不安を解消するんだ。明日から早起きして一駅分歩いてみよう。せめてランチは野菜定食。そして —

おもむろに検索の窓にキーワードを入れてみる。

AGA 日曜診療

日曜日しか自由になる時間がない。検索の一番に出てきたHPをひとまずクリックして、AGAに関する記事を読んでみる。やっぱり最近は男性の薄毛に関しての治療薬があることが分かる。

ケイタは思い切って電話してみることにした。対応してくれたのは、包容力のあるやさしい女性の声。ひとまず予約をした。ケイコとのデートが一回減るのは正直つらい。でも、このままでは先に進めない。

<ケイコとケイタ。その意外な結末は・・・続く。もしくは店頭にて>

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